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森の学校  森吉山麓高原で妖精と出会う旅~ブナ林に学ぶ~

 2023年9月23日(土)、森の学校「森吉山麓高原で妖精と出会う旅~ブナ林に学ぶ~」が、森吉山野生鳥獣センターなどを会場に開催された。一般参加者等29名が参加。今年は、少雨かつ史上最高の暑さを記録するなど異常気象の影響で、マイタケなどの食用キノコの発生が大幅に遅れている。そんな中、ブナの森散策コースを歩きながら食用タマゴタケや珍しい巨大なヌケオチ(エゾハリタケ)、猛毒のドクツルタケなどのキノコ観察会を行った後、森吉山野生鳥獣センターにおいて昼食、展示物の解説、「樹木とキノコの不思議な関係」について室内講義が行われた。
  • 主催/秋田県森林学習交流館プラザクリプトン
  • 協賛/(一社)秋田県森と水の協会
  • 協力 秋田きのこの会
  • ブナ林でのキノコ観察講師・・・「森吉山の花図鑑」(無明舎出版)の著者で、森吉山周辺の植物・山菜・キノコに詳しい田中誠さん、秋田きのこの会初代会長の阿部 実さんなど。
  • 飛び石伝いに沢を横断して、天然のブナの森を散策しながらキノコを探す。
  • 平坦な森には、200年~400年ほどのブナの巨樹が林立している。他に代表的な樹木は、ミズナラ、トチノキ、ホオノキ、ハリギリ、シナノキ、ヤチダモなど。
  • 死亡率の高い猛毒・ドクツルタケ・・・全体が白色のキノコで、傘の下にツバと根元にツボ、柄にはササクレがあるのが特徴。誤って食べると、死亡することもある恐ろしいキノコである。絶対食べてはいけないキノコの一つ。 
  • 傘が開いたタマゴタケ(食)・・・鮮やかな橙赤色で毒キノコのように見えるが、優秀な食用キノコだけに人気の高いキノコの一つ。
  • タマゴタケ(食)・・・幼菌の時は、卵型から饅頭型、そして中央部分が少し出っ張りのある平らな形に開く。強いうま味があることから、フライや炊き込みご飯、オムレツなどによく合う。殻を破る前の幼菌は、生食されることもあるという。 
  • タマゴダケの名前の由来・・・柄の根元部分に白いものがあるが、幼菌の時はそれがタマゴのように見えることから。
  • 不思議な食用キノコ「ヌケオチ(エゾハリタケ)」 
     「山村民俗誌」(森吉町生涯教育推進本部)には・・・これは不思議なきのこです。若い時は真っ白でブナカノカに似ていますが、大きくて固く、かみ切ることができないのです。昔から年を取り次第柔らかくなり、美味くなるきのこと言われるように、若いのは採らずにおいた方が得です。大きくなると、二貫目も三貫目にもなります。
     他の人に採られると思って、採ってしまう人もいますが、それは素人です。もし、10月末以前に採った時は、時々水をかけて、一か月置くと食べやすくなります・・・ブナの木の半枯れの高い所に生えるので、採りにくいです。春になって雪の上に落ちたのを拾ったことがありますが、それが一番美味しいです。ニンニク味噌和えや味噌漬けにして食べます。 
  • 秋田では、マタギが冬に半腐れになって落ちてきたものを利用したことから「ヌケオチ」と呼ばれている。拾ったヌケオチは、一昼夜、米のとぎ汁に浸し、熱湯で湯がく。その後、味が染みるまで味噌漬けにする。食べる時は薄切りにして盛り付ける。軟骨をかむような歯触りで珍味中の珍味だと言われている。 
  • キイロイグチ・・・鮮やかな黄色(オレンジ色)をしているイグチの仲間。
  • ツエタケ(食) ・・・名前の由来は、柄に続く根の部分が長く、杖(つえ)に似ていることから。特有の甘い香りと傘のヌメリが様々な料理に合う。傘は大きく刻んで炊き込みご飯やみそ汁に。柄はヌカや塩でさっと漬けてから食べる。
  • サルノコシカケ・・・一般に「猿の腰掛け」と表記されるとおり、人間が腰掛けても壊れないほど堅くて丈夫。
  • 観察したキノコ・・・チャワンタケ、ドクツルタケ、ガンタケ、キイロイグチ、タマゴタケ、ヤマドリタケモドキ、ツエタケ、ツルタケ、チチタケ、ヒロヒダタケ、エゾハリタケ、ヌメリツバタケモドキ、サルノコシカケなど 
  • 数百年ブナの巨樹・・・手で触ったり、抱きついたりすれば、「母なるブナ」のパワーをもらって、さらに長生きできるであろう。
  • ブナの森から湧き出すブナ清水・・・まろやかで飲みやすい軟水。これもブナの森の恵みの一つ。 
  • ユキザサの真っ赤な実・・・果汁には甘味があり、生で食べることができる。
  • ノコンギク、ゲンノショウコ
  • 森吉山野生鳥獣センター/「森吉山の自然」をテーマにした壁画・・・センターに掲げられた野生鳥獣の楽園・ブナの森の巨大な壁画は、なかなかの迫力がある。描いたのは田沢湖町在住の三村治男画伯。 
  • 森吉山野生鳥獣センター案内解説・・・村田君子さん
  • 月に1回程度、自然観察会や森のクラフトなど森吉の魅力を体験できる行事を企画しているという。 
  • 生活圏内で想定外のクマ被害が相次ぐ原因は・・・村田さんよれば、今年はブナの実もミズナラのドングリも凶作。サルナシも実をつけていない。だからこの森にはクマがいなくなった。森に食べ物がないので、クマは食べ物を求めて里に出没している。里の味を覚えると、山に帰ってこなくなるとも語った。 
  • 「樹木とキノコの不思議な関係」室内講義・・・秋田きのこの会会長 菅原冬樹さん 
  • 日本には、1万種近くあると言われているが、そのうち名前が付いているのは1/3程度。そのキノコの本体は、菌糸と呼ばれる細い糸状のもの。土や倒木などの中を縦横無尽にめぐり、繁殖のため、花が咲くように地上に現れる。その生活は、不思議な秘密や謎に満ちている。
  • スギヒラタケ(スギカノカ)はなぜ食べてはいけないのか?・・・かつて秋田では、スギヒラタケの味噌汁が定番であった。だから今だに、なぜ食べてはいけないのかと疑問を持っている秋田県人は多い。まず問題が起こったのは2004年以降、スギヒラタケを食べたことが原因と考えられる急性脳症が多数報告されるようになった。当初は、腎臓の機能が低下している人がスギヒラタケを食べると、急性脳症が起きるのではないかと考えられた。しかし、その後、腎臓の機能に異常が認められない場合でも、スギヒラタケを食べた後に病気を発症して死亡した事例が確認された。つまり、昔は、それが分からず、スギヒラタケが原因と分からないまま亡くなった例は、過去にたくさんあったと推測されている。だから長生きしたい方は、絶対食べてはいけない!
  • 植物と菌類の共生・・・スギは、キノコが作らない内生菌根菌と共生している。ブナはサクラシメジ、松はマツタケと共生している。ブナがこの寒い冬に生きられるのは、根に菌根菌が布団をかぶせたようにして凍害から守っているから。海岸林の松は、暑い夏、水不足になると、共生する菌から水をもらって生きている。キノコは、森を育む大切な役割を担っている。
  • 共存・共生の時代~菌根ネットワーク網・・・樹木は、根っこで菌糸が全部くっついている。そして、お互いに「会話」できる「菌根ネットワーク網」になっている。真ん中の大きな木を「マザーツリー」と呼んでいる。低木層の若い木々たちが「栄養がほしい」と言えば、マザーツリーからもらうことができる。逆にマザーツリーが「水がほしい」と言えば、周りの木々からもらうことができる。つまり、森の木々たちはお互いに争っているではなく、菌根ネットワーク網でつながり、お互いに会話しながら協力し合うことで共存・共生している。
  • その他キノコの生き方や冬虫夏草の果たす役割、キノコの効能、キノコは冷凍すれば美味しくなる、キノコ中毒、6つの迷信、海岸の松林など二次林を維持するには人とのかかわりが重要など盛りだくさんの講話が行われた。